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第四回:ディクテーションとシャドーイング

最近の語学学習、とりわけ英語に関しては特に賑わしている学習方法にディクテーションとシャドーイングがあります。

流行っていますので知っている人や聞いたことがある人が多いとは思いますが、よく知らない人もいるかも知れませんので、おさらいを含めて言葉の意味を軽く解説しておきましょう。


1. ディクテーション(Dictation)

英語を直訳すると「聴音書き取りすること」と訳します。

すなはち、ディクテーションとは、何かの音源を慎重に聞き取りそれを文字にして書き取ることです。

ディクテーションの初期段階では聞こえてくる音源がその国の文字(漢字やアルファベット)になるまで聞き取れないと書き取りは出来ないので、自分が認識できるまで何回も聞き直します。


2. シャドーイング(Shadowing)

英語を直訳すると「尾行すること」「つきまとうこと」と訳します。

すなはち、シャドーイングとは、何かの音源を慎重に聞き取りその音源につきまとうかのようにして後について同じ事を喋ることです。

シャドーイングでは、聞こえてくる音源と同じ音を出せるように繰り返し聞きながらその後をついて音をまねながら声を出します。

この2つの方法から言えることは、まず、インプットのスキルが同じでヒアリングで有ること、ヒアリングのため聴覚スキルを必用とすることです。

また、アウトプットはディクテーションがライティングであるのに対してシャドーイングはスピーキングであることが違いとして挙げられます。

この2つのトレーニングはインプットが同じなので、いずれもヒアリングスキル(聴解力)を向上させるためのトレーニングといえます。

但し、まず始めにこれらのトレーニングすするためにもっと重要なことが有ります。

それは、外国語としての発音要素がある程度聞き分けられる能力を有しているかが、ひとつの鍵になります。

たとえるならば、車の教習を考えて見ましょう。全く運転をしたことがない人がいきなり、路上運転したり、高速道路に出たりしたらどうでしょう。たちまち事故を起こしてしまうでしょう。

これらのトレーニングも同じような状況があり、正しい発音をある程度マスターし車で言う仮免状態からゆっくりと段階を追って進めないと事故を起こしてしまうのです。

つまりこのトレーニングをするための前提条件としては基礎発音をマスターしていること。言い換えれば、辞書などでよく目にする発音記号が正確に読めること、聞き分けられることです。

これをさけていきなり2つのトレーニングを開始したとしても、中には一定の成果を上げる人がいたとしても大概の人は、効果的な成果を上げられずに挫折することになります。

基礎発音のマスターについては別の回で説明する事にします。

次にディクテーションとシャドーイングの効果の違いに付いてですが、ヒアリングスキルの上げ方に決定的な違いがあります。

実は私は、以前「○○日でペラペラになる・・・・・英語マスター」なる情報商材を手にした事が有ります。

今でも持っていますが、内容的には理解できますが、最初に自分の学習モチベーションを保つ方法をマスターした上で、ひたすらディクテーションします。

最初はCDの音楽から、次は映画のDVDといった感じです。

しかし、これはあまり旨くいきませんでした。その理由が当分判らなかったのですが、その後私は以下の本に出会い、その理由が明確になりました。

たった3ヶ月で920点を取った、私のTOEIC TEST最短攻略法
たった3ヵ月で920点を取った私のTOEIC(R)TEST最短攻略法 (アスカカルチャー)

まあ、「たった○○月で~点取った」は無視するとして、この本は、最初に基礎音声の発声練習と聞き取り練習することから始めることを解説しています。

その上でシャドーイングを基本としてトレーニングすることとなっています。

この本を読んで始めて、最初のディクテーションの始め方が間違っていて、やはり仮免無しにいきなりディクテーションを始めたから挫折した事に気づきました。

何事も基礎無しに始めると失敗するという事です。

発音はヒアリングとスピーキングのスキルに影響します。

と言う事は、ヒアリングとスピーキングは同時に鍛えてシナプシス形成を測るのが最も早道と考えます。

そういう意味ではディクテーションはインプットとアウトプットのスキルが違う為、発音習得に関しては不向きなのです。

ディクテーションではヒアリングのみ発音に寄与します。

しかしシャドーイングの場合はインプットとアウトプットが両方とも発音スキルになるため、シナプシス形成の際に同じ単語を音としてイメージ化する事になります。

少し話がそれますが、骨伝導と言う言葉をご存じでしょうか?

これは、携帯電話用のマイクロホン&イヤホンが開発された時に日の目を見た言葉で、その仕組みは骨伝導という人体反応メカニズムを応用したもの。

詳細はこちらを参照されると良いでしょう。

通常外からの音声は空気が振動して音波という形で耳に届き音波により鼓膜が振動し、更に小骨を通って内耳、リンパ、脳を刺激します。

骨伝導では、頭蓋骨や顎骨の振動が直接小骨を刺激するというもの。

何故この話を出したかと言うと、自分が発した声はどうなっているかについて考えたかったからです。

 自分が出した音は確かに音波としても耳に届きますが、試してみると分かりますが、自分の両耳をしっかりと指でふさぐか、耳栓をして「あいうえお」と言ってみても聞こえると思います。

これは、自分が喋った音が、頭蓋骨内部で反響しそれが骨伝導によって小骨を刺激して聞こえているのです。

ここまで来ると分かると思いますが、喋ると言う事は、同時に骨伝導を使って自分の音を聞いているのです。

と言う事はシャドーイングした場合は、耳から入ってくる音声と、自分が喋る音声を同じ耳で比較すると言うプロセスが生まれます。

シャドーイングでは、この違いが少なくなる様に自分でコントロールして喋る練習を積む事で、よりネィテブな発音を手に入れる事が出来る様になります。

同時にその発音でシナプス形成が行われます。
シナプス形成はヒアリングも同時に行われるため、聴く音と喋る音の一致が発生します。

さて、ディクテーションの場合はどうでしょう。

スピーキングをしないので骨伝導の作用はありません。

この場合、聴覚から入った情報をライティングにより文字にし、その文字を視覚的にとらえて認識すると言うプロセスになります。

と言う事は、聴覚と視覚を結びつける効果を持っているという事です。

そしてその為のシナプス形成が行われます。(最近の学説では、書いた言葉を視覚スキルによって認識するが、脳内処理としてはビジュアル化された言語は一旦、音声情報へ変換されてから脳内部で比較処理されると考えられています。)

また、ヒアリング後に完全な文字認識を要求される為、かなりの付加と時間が必要になると言う弱点もあります。

 最近の研究では、ヒアリングに関してはある一定レベルまでは、シャドーイングの効果に優位性があるが、一定レベルに達するとシャドーイングとディクテーションは同レベルの学習効果である事が分かっています。

但し、リーディングに関しては、一定レベル以上の学習能力者の場合ではディクテーションの方が大きな優位性を持っている事も分かっています。

 また、別の回で説明する「脳の科学」において言語の習得の初期段階では音声重視である事も理解できます。

すなはち、これの意味するところは、一定レベルまではヒアリング重視で主にシャドーイング等の方法を用いて学習し、一定レベル以降は徐々にリーディング重視でディクテーション等の方法を用いて学習するのが効率的と言う事になります。

骨伝導という言葉を知るとディクテーション以外にも視覚と聴覚を結びつける方法がある事に気づきます。

それは、音読という方法です。
あまりに当たり前すぎましたか?

音読の場合は、まず本に書かれている文字を視覚的にとらえそれを声に出して読む事で骨伝導効果が発生し聴覚に届きます。

但し、ただの音読では外からの音がないので、自分は発音した音が正しいのかどうかが見分けられません。

ネイティブがそばにいて、音読をし、間違った発音をした場合に強制される以外に音読での発音強制方法は無いと思います。

また、黙読という方法がありますが、これは主に視覚スキルが中心になります。但し、ここでも視覚的にとらえたビジュアル文字は、一旦音声情報に変換してから脳内処理に入ります。

読書で黙読した場合(速読を除く)頭の中で音にしている自分がいるはずです。

視覚⇒音声化⇒脳内処理⇒理解

の流れで処理が発生するので、ある意味発音も鍛える事になるのかも知れない。

では、これらの方法を理解した上でより効率的効果的な、良い方法はないか?

考察してみると、次の事が考えられます。

準備として台本とその音源があるメディアを用意する。例えばCD付きのテキストとか、歌詞付きのCD、台本付きか母国の字幕付きDVDとかです。

この音声を聴きながら台本や歌詞、字幕をみてそれを声に出してシャドーイングするという方法。

この方法を使うと、聴覚スキルと視覚スキルを同時に使いインプットが発生します。

インプット後、音声情報として一旦記憶保存され、その後で意味解析(文法)処理がされ、更にアウトプットとして、スピーキングスキルを発揮し、その時同時に聴覚スキルで得た音声情報との比較が行われその差異について脳内処理が行われます。

言わば、聴覚、視覚、スピーキングを同時並行的に鍛える事になります。ここでディクテーションの様な書くという作業を行わないのは、ディクテーションの欠点である思考の中断を極力抑える為で、しかし、視覚面では読むと言う作業により代替えが可能だからである。

 但し、「書く」という作業を否定するものではない。前述しているように、ディクテーションの優位性はある一定レベル以上でリーディングに対するその効果が顕著に表れる事が分かっているから。

先に紹介した、「たった3ヶ月で920点を取った、私のTOEIC TEST最短攻略法」では、実は音読トレーニングとしてその方法の詳細が説明されています。

この本では、シャドーイングよりも更にハイレベルのシンクロ読みとして解説されています。
興味ある方は、一読ください。

この本は、英語のTOEIC攻略本として書かれていますが、その他の言語においても共通する話なので、問題はないと思います。

また、この本の「シンクロ読み」は、実際にはパラレルリーディング、シンクロリーディング、テキスト付きシャドーイング等と言われています。

(2010/04/27記)
誤記訂正、黙読を追加、最善の方法について記述を変更(2010/04/27改)
シャドーイングとディクテーションの効果の違いについて追記(2010/05/03改)
文書整形(2010/05/22改)